2011/08/29
平成23年度9月補正予算に対する要望書
栃木県知事 福 田 富 一 様
とちぎ自民党議員会
平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、本県にも多大な被害をもたらし、県政運営にも様々な面で大きな影響を与えている。
県においては、2年目となる財政健全化のための「とちぎ未来開拓プログラム」の成果が表れつつあるが、今後、震災による直接の被害や風評被害により県税収入の減少が懸念されるところである。しかし、このような状況の下においても、一日も早い被災地の復興と、農畜産物の出荷制限等による打撃の解消に努めることは、県の大きな責務である。
戦後最大の国難に見舞われているこの状況下、国は国民不在の政権維持に走り、震災被害の復興に向けた抜本的な取り組みが後手に回っている中、県は当面の課題に迅速・的確に対処し、もって県民生活の安全安心の確保と、失速しつつある県内産業の振興を図らなければならない。
以上の観点に立って、震災対策を中心に別紙のとおり要望書を提出するので、予算編成にあたっては、十分検討の上、それぞれの措置を講じられるよう強く要望する。
単位:千円
( )内は内数
(要望事項)( )内は内数
1.県内経済の震災からの復興と成長について
平成20年秋のリーマンショック以降ようやく立ち直りの兆しを見せていた本県経済は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災及びそれに続く福島第一原子力発電所の事故により深刻な打撃を受けた。発生から5か月余が経過し、震災後の経済は上向きの動きも見られるものの、中小企業にとっては持ち直し感が乏しく、円高や電力不足の影響も重なり、県内中小企業は厳しい経営環境に置かれている。また、有効求人倍率の低迷が続くなど、雇用情勢は極めて厳しい。
よって、地域経済の活性化は現下の最優先課題であり、県内の経済団体等とも密接な連携の下、本県経済の震災からの復興と成長を目指して具体的かつ効果的な施策を戦略的に講じていくこと。
(1)雇用の安定と新規学卒者等の就職支援について
本県の有効求人倍率は、震災後の落ち込みから持ち直しの動きが見られるものの、全国平均を下回っており(23年6月:栃木県0.59・全国平均0.63)、雇用情勢は依然として厳しい。また、来春の高校卒業予定者に対する求人数は昨年同時期と比べて10.3%も減少しており、このままでは新規学卒者の就職内定率の悪化が懸念される。
このため、基金を活用した震災対応事業などの緊急雇用対策を切れ目なく実施し、雇用を確保するとともに、新規学卒者や若年者に対する就職支援の充実をはじめ、個々の実情に応じた相談から就職までを一貫して積極的に支援する取組を行っていくこと。
(2)既存企業の定着促進と新規企業の立地について
震災後、リスクの分散化や電力の使用制限、また、引き続く円高等により、海外移転を含めた企業の生産拠点の再編が続いており、企業立地に関する地域間競争が激しくなっている。
このため、県では6月補正で企業立地に向けたインセンティブを強化したが、今後は個々の企業に応じたきめ細かな支援に取り組むなど、既存立地企業の定着促進を図るとともに、「栃木県企業誘致・県産品販売推進本部」を活用し、自動車等の重点振興5分野や食品関連産業等地域経済への波及効果が大きい企業の誘致など、戦略的な企業立地を促進すること。
(3)県内中小企業の支援について
地域経済を支え、本県産業の発展に大きく寄与してきた県内の中小企業は、社会経済状況等の変化の中で、厳しい経営を余儀なくされている。特に、原発事故に伴う風評被害は、観光業をはじめとする県内中小企業に深刻な打撃を与えている。
このため、身近な相談窓口である商工団体等と連携し、中小企業の経営改善を支援するため、具体的かつ実効性のある施策を講ずること。
また、県内中小製造業については、震災の影響により受注量が回復しないなど厳しい経営環境に置かれているため、新たな発注先の開拓等を支援すること。
○風評被害経営改善支援事業費 4,032
(4)震災からの復興を図る中小企業の資金繰り支援について
震災により、県内の中小企業は工場、店舗や設備の損壊等の直接的な被害に加え、部品・原材料の調達難や原発事故に伴う風評被害等により間接的な被害を受けており、資金面での支援が必要な状況にある。
このため、県では6月補正で、直接・間接の被害を受けた中小企業を対象とした「東日本大震災復興緊急資金」を創設し、県内金融機関に対し、経営状態が悪化している企業に対しても積極的に支援するよう要請したところであるが、引き続き同資金の利用状況を注視するなど、中小企業の資金繰り支援に万全を期すこと。
(5)風評被害払拭のための観光誘客対策について
原発事故に伴う風評被害により、本県の宿泊客数は4月で対前年比約4割減、5月でも約3割減少するなど、観光立県を目指す本県の観光業は大きな打撃を受けている。このため、県では風評被害対策を国へ要望するとともに、6月補正で観光誘客対策のための予算を計上したが、未だ事故の収束の目処が立たない中、秋冬の観光シーズンを迎えるにあたり、イベントを活用した誘客活動や、市・町との連携した取組などオールとちぎ体制で実効性のある観光誘客対策を切れ目なく実施すること。
○元気なとちぎ!テレビ番組誘致事業費 19,140
○ICT活用誘客宣伝事業費 7,000
(6)栃木県企業誘致・県産品販売推進本部の活用について
本県産業の発展を図るには、わが国の一大消費地である首都圏での販売促進活動が不可欠である。
このため、県では東京事務所に「栃木県企業誘致・県産品販売推進本部」を設置し、栃木の産業用地や県産品などの「とちぎのいいもの」の首都圏等における売り込み体制を強化したところである。
同本部では、震災後、食の安全や風評被害払拭のための観光誘客活動に当面の重点を置かざるを得ない状況であったが、今後は、引き続き誘客に取り組むとともに、本来の目的である戦略的な企業誘致や県産品の販売促進に取り組み、本県の首都圏における活動拠点としての機能を十分に発揮すること。
(7)一万人プールの復旧について
昭和48年の開設以来、海のない本県で多くの県民に親しまれてきた一万人プールが被災し、この夏の営業を断念せざるを得なくなり、県民のニーズに応えることができない状況にある。
県営公園の一角に位置し、他の公園内施設と有機的に結びついていた一万人プールの早期の再開は県民の願いでもあるため、県は責任を持って復旧を行うとともに、より利用しやすい施設となるよう施設機能の見直しも含めた復旧計画を策定し、早期の再開を期すること。
○井頭公園施設整備費 40,000
(8)グリーンスタジアムの整備について
栃木SCの活躍はめざましく、J1への昇格対象となる3位以内が射程圏内にあり来期の昇格が現実味を増している。
しかしながら、栃木SCのホームスタジアムであるグリーンスタジアムはJ1基準である入場可能数1万5千人以上を満たしていないことから、栃木SCが3位以内に入っても現状ではJ1への昇格は認められないこととなる。
J1チームの存在は、県民に元気を与え、一体感を醸成するとともに、地域経済に大きな波及効果をもたらすものと期待される。 県は、グリーンスタジアムのJ1基準を達成するため、早急に必要な措置を講じること。
○県立スポーツ施設改修費 73,000
○グリーンスタジアムJ1対応事業費 3,500
(政調上乗せ 3,500)
(9)震災からの復旧復興に取り組む市町の支援について
市町は、東日本大震災からの一刻も早い復旧復興を目指し、国庫補助や地財対策等を有効に活用し、災害復旧復興関連事業に取り組んでいる。
一方で、これらの災害復旧関連事業の実施に伴う地方負担分が増加しており、財源の確保がこれらの事業を円滑に進める上で新たな課題となっている。
県は、とちぎ未来開拓プログラムにより、平成22年度以降、市町村振興資金の新たな貸付を休止しているが、市町による災害関連事業の円滑な実施と被災した地域の一刻も早い復旧復興を支援するという観点から、プログラム期間中の特例措置として、休止の取扱いを解除し、市町村振興資金の活用を考えること。
また、その場合は、貸付利率にも十分に配慮すること。
2.保健・医療・福祉の充実について
(1)食品の安心・安全について
腸管出血性大腸菌O157による食中毒等が多発し、一方では放射性物質の混入による食品の安全性に対して消費者の不安が高まるなど、今日、食を巡る状況は緊迫の度を増している。
①こうした事態に鑑み、生産段階においての安全と信頼を確保するためにGAP(農業生産工程管理)やHACCP(危害分析重要管理点)、トレーサビリティ(農産物や畜産物の生産・流通管理情報の公開)といった取組を一層充実させること。
②消費者に対しては、食品の安全性への理解を深めるために知識習得への支援策を講じるとともに、相談体制を充実させ、併せて食育の普及啓発に努めること。
③放射性物質に対する食品安全管理については、農産物のモニタリング検査を強化するとともに、県民への正確で迅速な情報提供に努めること。
(2)地域医療の再生について
地域の中核病院などにおける医師の偏在(診療科目の偏在、地域による偏在)などにより、県民への医療提供体制の整備が必要な事態が続いている。
①このため、今次の地域医療再生計画に掲げる、地域医療を担う医療従事者の確保・育成、4疾病5事業や精神科医療等に係る医療提供体制の整備、医療機能の分化と連携の推進を通して、地域完結型医療提供体制の構築を実現すること。
②特に、全国モデルとなる地域基幹病院の統合再編を積極的に推進すること。
(3)高齢者の福祉について
県高齢者支援計画はつらつプラン21(四期計画)が最終年度を迎える中、県では、平成26年度(団塊世代全てが65歳以上となる年)を見据えて来年度からの五期計画の策定に入っている。ついては、本年度スタートした新とちぎ元気プランに掲げる重点戦略「暮らしを支える安心戦略」を踏まえ、実現可能でしっかりとした高齢者支援計画の策定に当たること。
○社会福祉施設等復旧支援事業費 33,041
(4)障害者の福祉について
障害者自立支援法に基づく県障害福祉計画(二期計画)が最終年度を迎える中、県では、来年度からの三期計画の策定に入っている。二期計画では、福祉施設の入所者及び入院中の精神障害者の地域生活への移行や福祉施設から一般就労への移行を目標としてきたが、これまでの取組や改正障害者基本法を踏まえながら、実現可能なしっかりとした計画とすること。
また、障害のある方が地域で安心して暮らせるよう、セーフティネット拠点事業の事業化に努めること。
○障害者自立支援対策臨時特例基金事業費 105,738
○安心こども基金事業費 374,127
(5)人工透析治療体制の整備について
腎不全により人工透析治療を受ける患者は年々増加しており、県内でも5,000人を超えている。
透析治療は、患者にとっては、心身ともに負担の大きな治療法であるが、日々の生活を送るために不可欠な治療となっており、また、働く世代が日中に仕事をこなすには、「夜間透析」も欠かせないものとなっている。
こうしたことを踏まえ、人工透析患者が、安全安心に透析治療を受けられ、安定した療養生活が送れるような環境づくりに努めること。
(6)インフルエンザの適切な対応について
平成21年度に発生した新型インフルエンザは、本年4月に季節性インフルエンザとしての対応に変更されたが、警戒を緩めることなく、今冬の流行に備えること。また、新たな新型インフルエンザの発生に備え、対応体制の整備を遅滞なく進めること。
3.県民の安全・安心確保のために
(1)公共事業予算の確保について
東日本大震災では、本県においても大きな被害が発生したが、6月定例会での補正予算の成立によって、県内の道路・河川等の復旧費用は一応の見通しがついた。しかしながら、リーマンショック以降、低迷していた県内経済への震災の影響が今後懸念される中、経済波及効果や雇用創出の観点からも公共事業を引き続き推進していく姿勢が重要である。震災を契機に社会資本整備の重要性が広く再認識されているが、継続的な予算削減により適正なタイミングで維持補修が行われていない箇所も多くあることから、必要な予算・事業の確保を図ること。あわせて、継続的かつ円滑な事業執行を図っていくため、事業調査費や用地取得費についても充分に配慮すること。
○県単公共事業費 2,210,000
(政調上乗せ 1,700,000)
ゼロ県債 《政調上乗せ 2,000,000》
(2)震災を教訓にした計画と長寿命化への基準の策定について
東日本大震災による被害を検証すると、道路が堤防の役割を果たした例など、「コンクリートが人と暮らしを守る」とも言える状況が多く見受けられ、真に必要な社会資本整備は信念をもって推進すべきとの教訓が導き出せる。これを受け、未来開拓プログラムの期間中ではあるが、本県においても減災の観点も踏まえて、中長期的な整備計画を準備すること。また、超少子高齢社会を見据えての効率的な予算執行を実践するため、社会資本ストックのベストタイミングでの維持補修の実施と長寿命化のための本県独自の工事・施工の基準を示すこと。
(3)災害に強い県土づくりの推進
先の新潟県や福島県の例にあるように、地球温暖化の影響等により異常気象が常態化する今日にあっては、県民の生命・財産を守るための公共事業の推進はこれまで以上に重要になってきている。平成19年の台風による集中豪雨では、県内にも孤立地域が発生する事態となったことは記憶に新しい。そこで、河川の改修や堤防の強化、橋梁の豪雨対策を推進するとともに、災害情報の伝達方法についても市町村と協力し万全を期すこと。また、専門家による大規模な余震の発生も指摘されていることから、計画の前倒しや対象の拡大を含めて、施設の耐震対策に着実に取り組むこと。
(4)安全な通学路の整備
鹿沼市の痛ましい事故を教訓に、知事もあらためて通学路における児童・生徒の安全確保への決意を示した。通学路の選定については、最近では交通安全の視点に留まらず、犯罪を未然に防ぐという観点から、できるだけ人や車の往来のある県道など幹線道路への選定変更も少なくない。「学校および通学路等における児童等の安全な確保に関わる指針」にも明記されている、安全な通学路の整備・促進と定期的な点検を確実に実施すること。
(5)開発許可の特例措置の周知
東日本大震災により、県内においても、造成された住宅地等において、擁壁が損壊するなどの甚大な被害が発生している。このような宅地の被災により、やむを得ず転居せざるを得ない場合、市街化調整区域においても住宅の建築等を可能とする都市計画法上の開発許可に関する特例措置が講じられた。
被災者を確実に救済するため、この特例により開発許可を得る際の基準を市町のみならず一般県民や民間事業者にも広く周知すること。また、建築確認の手続きの迅速化など、実務者からの要望等も踏まえて早急に対応を強化すること。
(6)公共工事の品質の確保
公共工事におけるダンピングを防止し、技術と経営力に優れた建設業者が十分に活躍することにより、良質な社会資本ストックを形成していくことこそが県税の有効な活用にほかならない。「公共工事の品質確保の促進に関する法律」の趣旨に則り、本県の入札契約制度については適宜・適切に見直し・改善を図ること。具体的には、国レベルの対応・対策に歩調を合わせるのではなく、本県公共工事の理念に基づき、最低制限価格と失格基準を同じくするなど先進的な取組を積極的に導入すること。併せて、県内の各市・町における総合評価方式の導入促進についても積極的に支援すること。
(7)危機管理体制の強化
東日本大震災及び福島第一原子力発電所の放射能事故に起因して本県においても人命及び自然、経済産業全般にわたって危機的な事態が発生し、今なお極めて厳しい対応を迫られる事態が続いている。
こうした事態を前に本県の防災・危機管理体制は一段の見直しや体制強化が不可欠であるがそのあり方については、今後の議会の対応を踏まえて早急に検討すること。
○被災者生活再建支援基金拠出金 1,384,086
(8)地方合同庁舎の耐震補強工事について
県は、平成27年度までの耐震改修を目指し栃木県建築物耐震改修促進計画に基づき、今年度当初予算に那須庁舎の耐震改修等に係る設計委託費を計上したが、芳賀及び上都賀庁舎を含めた地方合同庁舎については、出先機関の集約化と合わせた建て替え検討の必要性や、県議会における出先機関のあり方等の議論も踏まえる必要があるとの認識により、執行が留保されている。
しかしながら、東日本大震災により芳賀及び上都賀庁舎は被災し、県有施設の耐震化は一層推進しなければならない。このため、これらの庁舎については費用対効果や耐用年数を踏まえ、建て替えも含め検討を進めること。
なお、仮庁舎を必要とせず外付け工法で耐震化が可能である那須庁舎については、当面は耐震改修により対応すること。
4.農林業の振興と環境対策について
福島第一原子力発電所の事故による放射性物質の拡散や風評被害が本県の農林業に甚大な影響をもたらしており、今後の成り行きにも不安定な要素が拭えない現在、これらの不安を払拭して一日も早く安全安心な施業環境を整えることが喫緊かつ最重要課題である。環境対策の分野においても、放射能に関する施策の着実かつ確実な実施が最優先される。農・林・環境の各分野には従来から広域多岐にわたる重要課題があるが、震災復興に向かうこの機会を通じて、元気プランが目的としている諸施策をより一層前進させていかねばならないと考える。
(1)原発災害に対する適切な対応について
1)損害の賠償及び補償について
①賠償金の全額支払いや補償制度等の適用が早期に行われるよう、国及び東京電力に更に強く要請する
こと。
②賠償・補償漏れ及び支払いの遅延によって、善意の農林業者に影響が及ぶことのないよう、万全の対策
を講じること。
イ. 補償制度の範囲及び程度に不足が生じた場合、または予見される場合には補償制度の新設・見直し
を国及び東京電力に要請すること。
ロ. 出荷遅延牛飼料の現物給付を素早く決定した如く、県独自の緊急支援事業を準備し、即実行に努める
こと。
ハ. 賠償・補償の先払い(立替払い)制度を構築すること。
ニ. がんばろう“とちぎの農業”緊急支援資金については早速融資限度額を拡大等したが、これらの実施
については、利用者本位で使いやすい運用に留意すること。更に農林業の各種経営資金の拡充・利
用条件の緩和を図ること。
2)牛の出荷制限対策について
牛の出荷制限は、肥育農家だけでなく、繁殖農家も多大な影響を被っている。子牛の販売価格の下落は
歴然としており、既存の経営安定制度での対応には限界があり、新たな支援策が必要である。そこで、国及
び東京電力に対し子牛の販売価格差及び実質上出荷見合わせとなっている子牛の飼料代が補償されるよ
う要請すること。
3)米の対応策について
①収穫期を迎えた米の収穫作業が、モニタリング検査の結果待ちで遅延する事態は回避しなくてはならな
い。よって、米の収穫時期を踏まえ、迅速な対応が可能な体制づくりを進めるとともに、結果判明前に流
通することのないよう適切な指導を行うこと。
②放射性セシウム濃度が暫定規制値を下回ることが確認された米については、その安全性の周知徹底に
ついて国に強く要請すると共に、県においても消費者の理解が促進されるよう、努力されたい。
③特に考慮すべきなのは、暫定規制値を大きく下回りながらも、「微量」の検出結果が出た場合である。人
体への影響において「グレーゾーン」の如く認識されれば風評被害を招きかねない。規制値以下は安全
であるとの情報発信をわかりやすく、工夫して行うこと。また玄米のみならず精米後の白米の数値を示す
など、特段の配慮を重ねられたい。
4)放射性物質のモニタリングについて
①県内の放射性物質のモニタリング検査について、土壌や主要農産物はもとより、特用林産物など、地域
の要望を踏まえた幅広い品目を対象に加えたモニタリング検査が実行できるよう、検査体制を早期かつ
十分に拡充すること。
②わらや落葉、バーク等、農業生産に必要な資材等については、事故当時に地表面付近で直接セシウム
を吸着した可能性があることから見落としなく注意を払っていく必要がある。このような観点から堆肥、飼
料等に係る放射性物質による汚染状況について、早期に検査を実施すること。
③地域における検査体制の充実強化のため、放射性物質の分析器導入を希望する市町等への支援を行
うこと。
④検査結果や規制の基準については、米に関して既述したように、速やかに正しい理解をもたらす情報発
信を行うこと。また、それらについて関係者への周知徹底を図ること。
○環境モニタリング強化事業費 228,886
5)放射性物質の除去・低減対策について
①農地等における放射性物質の除去・低減対策の充実強化を図ると共に、利用できない牧草・稲わら、堆
肥・腐葉土、茶葉等の処分を国に要請するなど、農業者の将来に向けた生産環境の整備を進めること。
②放射性物質の吸収抑制に関する試験研究を充実すると共に、技術対策を確立して生産者への指導を徹
底すること。
○牧草処理緊急対策事業費 30,000
(政調上乗せ 30,000)
6)県産農産物の安全安心のPRについて
牛の出荷制限の影響や主食である米に対する不安など、今後、本県産の牛肉や米等に対する風評被害
の発生が懸念される。そこで、その安全性に関する消費者の信頼を確保し、県産農産物のブランド力の維
持・向上と農家経営の早期安定を図るため、広告・マスコミ媒体を活用した情報発信や、各種キャンペーン
活動を実施するなど、風評被害の発生防止及び払拭に万全を期すこと。
○県産農産物の安全・安心PR事業費 24,665
(政調上乗せ 1,700)
7)農林業基盤に係る被災箇所の復旧について
東北地方太平洋沖地震によって、本県の農地、農業用施設、山林など、本県の農林業基盤が多く被災し
た。災害復旧が進行中であるが、早期の完了を望む。また、様々な要因で復旧が手付かずの箇所が少なく
ないが、これらについても、関係者との協議、状況の観察を継続し、善処されたい。
①斜面等に生じているクラックについては、二次災害等の発生を抑止すべく、状況観察のみならず、必
要な対応を行うこと。
②山地の崩壊等については、多くが後年度の施工予定箇所となっているが、吹付等、斜面の安定対策
を実施すること。
8)災害廃棄物の処理について
東日本大地震に係る災害廃棄物の処理について、適正かつ円滑な処理を着実に進めること。
○流域下水道管理事業費(特別会計) 335,410
(2)エネルギー対策について
1)再生可能エネルギーについて
自然エネルギー、地域資源を活用した再生可能エネルギーの利活用を推進することで地域の活性化を図
っていくことが重要である。
①メガソーラーの導入に向けて、未利用地や山地の斜面等の導入可能性を精査し、更に積極的な取り組
みを行うこと。
②小水力、マイクロ水力発電の導入計画を作成し、可及的速やかに設置を推進すること。
2)省エネルギーの推進について
栃木県地球温暖化対策実行計画に基づき、節電対策として県有施設における省エネ設備の導入を推進す
ること。また、民間の施設に対する支援の強化を図ること。
①夏期電力の節減のためには、空調設備の更新が極めて有効なことから、積極的な取組を行うこと。実施
に当たっては、財政負担が軽減されるリース方式、ESCO事業の活用を検討すること。
②地熱利用の空調システムは、夏季冬季共に有効であることから、その導入について研究すること。
(3)鳥獣被害対策について
現在、深刻な影響をもたらしている鳥獣被害に対して、県内18の市町が「鳥獣被害防止計画」を策定して
いる。県においては、これに基づいて市町が行う総合的な取組への支援を充実されたい。
○獣害から農作物を守る対策事業費 42,490
(4)新規需要米の利用促進について
水田の有効活用と食料の安定供給を推進するため、米粉用米の作付け及び米粉の生産体制を早急に整
備する必要がある。
新規需要米である米粉の需要拡大に向けた事業者の施設整備等への支援を充実すること。
○米粉生産製造連携対策事業費 293,955
(5)林業の振興と森林の整備について
①国産材の需要が低迷する中、厳しい環境下にある林業の現状も踏まえ、裾野の広い住宅産業の持つ経
済効果を勘定して、県産出材を利用した木造住宅への建築支援を含め、県産材の有効利用を促進するこ
と。
②森林の持つ多面的機能に着目して、森林の管理保全に資する林道や作業道の整備に努めるとともに、
間伐材の利用を促進すること。また、特用林産物の生産促進に配慮すること。
○森林整備加速化・林業再生基金事業費 114,759
5.教育環境の充実について
(1)園庭における放射性物質の除去について
福島第一原子力発電所の事故は収束の目途が立たず、我々栃木県民も放射能汚染の不安の中で生活をしている。特に子どもたちへの影響については、多くの保護者が極めて深刻にとらえている。私たちは子どもたちの周辺環境の中にある放射性物質をできる限り減らしていく取組を続けていかなくてはいけないと考える。
中でも幼児は、放射性物質が多く残るといわれている砂場や芝生で遊ぶ機会が多い一方で、その管理・指導については幼稚園、保育所により差があると聞く。また、保護者からの不安の声も多い。
放射性物質による健康被害について不確実なことが多い中で、一つ確かなことは、表土を除去することにより放射性物質が減少するということである。
県内には幼稚園、保育所を合わせて約600施設あるが、表土除去を希望する施設については、県として表土除去費用の一部を負担する制度を創設すること。
(2)学校給食の安全性確保について
栃木県内でも地域により野菜、牛肉の放射能汚染が発生してしまった。食に対する県民の不安は増している。
児童生徒等が口にしている給食について、子どもたちの健康被害を防ぎ、且つ地産地消をしっかりと推進していくためには、その安全性・信頼性を十分に確保していくことが必要である。
教職員が保護者からの問い合わせに的確に対応でき、学校現場での混乱を防ぐという観点からも、子どもたちにとって安全な食材を使用することはもちろんのこと、その安全性を証明した上で情報を積極的に発信していくこと。 (※農政部・「県産農産物の安全・安心PR事業費」1,700千円にて対応 P10)
(3)児童生徒の暴力行為への対応について
2010年度の県内小中高校における暴力行為発生件数が過去最多となってしまったことは、誠に由々しき事態である。
学校、市町教育委員会と連携・協力しながら、児童生徒だけでなく、家庭・保護者への指導を強化していかなければならない。健全な児童生徒が被害を受けることがないよう、暴力行為に対しより厳しい措置を講じていくことも必要である。
県教育委員会では、各教育事務所に設置されている「いじめ・不登校等対策チーム」を中心に対応するとのことであるが、学校現場から実情をヒアリングしながら、現在の体制・陣容で十分か否かの検証をすすめ、必要であるならば強化を進めること。
また、いじめ認知件数は全国14位、不登校児童生徒数は全国7位、高校中退者の割合は全国6位と、前年度比では減少しているものの依然として厳しい現状にある。これらについても引き続きの取り組みをお願いしたい。
○小・中・高校運営費補助金 109,300
○幼稚園運営費補助金 45,653
○被災文化財緊急復旧対策事業費 3,905
6.安全・安心の確保に向けた警察行政の推進について
(1)交通死亡事故抑止対策の推進について
本県における交通事故は、発生件数、負傷者数ともに7年連続で減少したものの、死者数が5年ぶりに増加に転じてしまい、人口10万人当たりの死者数が全国ワースト1位となるなど、憂慮すべき状況が続いている。
今年は交通事故死者数100人以下を目標に掲げているが、現時点では達成が難しい現状にある。
そこで、「高齢者に優しい3S運動」のより一層の普及啓発に努めるとともに、交通安全施設の整備を前倒しで進めていくこと。
(2)災害時に対応できる施設整備について
3月11日に発生した大地震では、災害警備活動の拠点となる警察署の一部が損壊したほか、老朽化した警察署では、発動発電機の容量が十分ではなく、停電により一部警察活動に支障をきたしたと聞いている。
どのような状況下でも治安維持機能を十分に発揮することが、県民の安全確保につながることから、警察署における発動発電機の整備・改修に早急に取り組むこと。
また、警察本部庁舎においては、電源装置が老朽化していると聞いており、停電時の警察活動に支障をきたすことがないように整備・改修を進めること。
○信号機用発動発電機整備費 14,656
○物損事故情報管理システム整備費 22,679
計 23重点事業 5,520,022千円
(政調上乗せ 1,735,200千円)
うち一般会計 5,184,612千円
うち特別会計 335,410千円
《ゼロ県債 2,000,000千円》