政策提言・時事問題リポート

2009/10/01

県議会9月定例議会

県議会9月定例議会で、一般質問を行いました。
今回は、県で「財政健全化プログラム」策定中という時期にあたることからも、できるだけ大きな支出を伴わずに、効果を発揮できる工夫という観点から、質問を考えました。
その内容について、いくつか報告します。詳細につきましては、県議会のホームページをご覧ください。


1) 新型インフルエンザへの対応について
① ハイリスク者が重症化した場合の対応について
我が国でも当初の専門家の予想を超えた状況にある。厚生労働省の指導範囲に留まらず、あらゆる事態を想定した準備を進めていくべきである。また、小児や妊婦、基礎疾患を有する方など、いわゆるハイリスク者が重症化した場合の受け入れ体勢について、県としてきちんと把握しておかなければいけない。そして、県民に対し正確な情報提供をタイムリーに行う機会を積極的に設け、県民の安心感、県への信頼感、そして県民の冷静な行動とつなげていってほしい。

② 流行ピーク時における対応について
先月28日に厚生労働省が公表した「流行シナリオ」のとおりに流行がピークに達した場合、医療機関の窓口に患者が殺到するといった事態もありえます。特に、小児科や産婦人科については、通常でも医師不足が指摘されているわけである。流行ピーク時における混乱を避けるため、県として対策を講じる必要がある。そのため、安易な夜間・休日などの救急外来の利用を控える、いわゆる「適正受診」を住民に呼びかける努力をして欲しい。さらに、感染を拡大させない取り組みとして、個々人の「咳エチケット」をはじめとする配慮、気遣いも大切であるから、啓発をするべきである。

< 参考 >
◆ WHO による学校の休校や学級閉鎖などの措置に関する初めての見解
学校が地域社会にウイルスを広める場となってしまっている。大流行の最初の段階で適切な学校(学級)閉鎖をすることにより、地域全体で感染が拡大するペースを遅らせることができる。それにより、薬の在庫を確保する時間を稼ぐことが出来るほか、医療機関への過度な集中を防げる。詳しく言うと、人口の1%が体調を崩す以前の、感染が拡がり始めた初期段階に学校を閉鎖した場合、にその効果が大きい。学校閉鎖により、感染拡大のピーク時の医療需要を推定で30~50%縮小できる。→ 日本では推定患者数は15万人。まだ1%未満。
◆ 「新型インフルエンザの患者1人が他人にうつす人数を1割減らすだけで、国内患者の総数は4分の3にとどまり、ワクチン1,600万人分の効果に匹敵することが、東京大学助教授らの計算で分かった。マスク着用などの患者のちょっとした心がけが、ウイルスの蔓延防止に大きな効果を生むことを示す初めての結果である。」


2) 特別支援学校について
職業訓練を中心に行う、いわゆる「高等特別支援学校」の整備は、障がいを持つ生徒さんの自立支援のために必ず実行しなければいけない。複数の学校を新規に整備する財政的余裕はないのなら、例えば、特別支援学校(=養護学校)の小学部については、地域にある小学校の空き教室を借りて活用して授業を行う。そして特別支援学校の空いたスペースに職業学科を設置する、といった工夫をしてはどうか。また、全国的には、市立の高等特別支援学校もある。宇都宮市が市立で整備をできないか、協議も必要であろう。1年でも半年でも早い整備を求める。また、指導にあたる先生の養成・確保も遅れることなく進めてほしい。


3) 行財政改革について
① いわゆる「簡素で効率的」な組織のあり方について
行政改革と財政改革は一体のものであり、行政改革を伴わない改革では効果が薄い、あるいは一時的な処方にすぎなくなってしまう。今回の「未来開拓プログラム(試案)」では、組織体制のスリム化と職員数の削減が盛り込まれているが、組織については、改革の実効性を高めるために、庁内の各セクションにおけるメリハリある職員配置を含め、「簡素で効率的」な組織体制を追求していかなければならない。静岡県に見られるような、施策実施部門を目的別に大くくり化した「目的指向型」の組織も大いに参考になる。方針が明確で、メッセージ力も高い。メリハリ職員配置も進めていかなければいけない。今後さらに人員が削減される中で、実際の仕事量や多忙感の差という観点からの是正と、政策の重要性・緊急性の観点からの是正が必要ではないか。部局一律削減は効率的でも公平でもない。各部に投げかけず、誰かが責任と権限を持って断行していくべきである。従来の節約型の行政改革ではなく、民間企業の経営理念や手法、成功事例等を導入した生産性の高い行政運営を求める。より戦略性を強めた組織、計画が必要である。

(静岡県の例)
施策実施部門を目的別に大くくり化
◇ 市場開拓・販路拡大の一元化
商工労働部の地場産品+農業水産部の農水産物+環境森林部の林産物   =産業部として集約
◇ 道路交通ネットワーク構築の一元化
土木部の国道・県道・市町道、街路+農業水産部の農道+環境森林部の林道 =建設部として集約

② 県有財産の経営的視点による有効活用について
栃木県における財産管理の状況については、行財政改革大綱の中で「未利用財産の処分」という言葉で表現されているのみであり、基本的な考え方や方針、判断基準が見えてこない。そもそも、県でいう「処分」とはつまり「売却」のことを指しているようだが、これではいけない。 より戦略性を含んだマネジメントの視点が必要である。そこでは、最小のコストで最大の効果を得るための手法を模索した、管理・運営についての明確な考え方、方針、あるいはビジョンを策定していかなければならないし、それを効率的に推進する組織が必要になるとも考えられる。 従来の管財の在り方を抜本的に見直し、学校も含めた全ての県有財産を経営的な方法で、いわば「保有から活用へ」と一元的に扱うシステム作り、いわばファシリティ・マネジメントの視点を取り入れていく必要性がある。

< 参考 >
ファシリティマネジメントとは、「土地・建物・工作物・物品などの財産を経営資源と捉え、経営的視点に基づき、総合的かつ短期及び中期的観点から最適化(最小コスト・最大効果)を図りながら戦略的に保有・処分・活用・維持していく管理手法のこと」と一般的には定義づけされている。

4) 官民連携策による産業団地造成について
税収、雇用、消費など多くの点からしても、優良企業の誘致、地場産業の活性化などの産業の振興は地域の将来活力を担う極めて重要な事業である。県南地区においては、産業団地はほぼ全て分譲済みの状況にあるが、造成や維持管理にかかる経費、ストックとなることへの不安から、なかなか新規の造成計画が立たない。そこで、県と地元市町、民間企業が連携し、計画策定から用地の確保を地元自治体が行い、造成から分譲までを民間が行うという、いわゆる官民連携型の事業方式を導入してみてはどうか。例えば、民間開発が可能な地区については民間主体による計画的な開発を誘導し、民間開発では整備困難な地区については、比較的小規模な公的開発を行う。また、長い目で見て、産業団地を開発できる民間を育てる、という理念を持つことも大切ではないか。しっかりとした官民協働のルールをつくり、県側から民間へ働きかけを行っていくことは、財政状況が厳しい本県にとっても有効であるし、また必要であると考える。また、企業進出需要に対応しうる、スピード感のある整備を推進できる態勢を整えていくことにも取り組んで欲しい。