政策提言・時事問題リポート

2007/06/26

森林環境税導入に当たって

今月8日に開会した定例議会も本日閉会を迎えました。議案の採決が行われましたが、その中の1つ「とちぎの元気な森づくり県見税」条例、いわゆる森林環境税条例がありました。

先ず、この条例制定の背景について少し触れます。森林には木材生産基地としてだけでなく、環境面からも二酸化炭素の吸収や水源の涵養、土砂流出の防止など、様々な機能があります。特にこのところの地球温暖化の進行と、それに伴う異常気象、さらには自然界における異常現象の報告など、環境破壊を食い止めるのに時間的な猶予はないのが実情です。しかし、木材価格の低迷などにより、林業従事者も減少し、森林整備を計画的・持続的に進めていくことが困難になっていることから、公的な財政関与が必要と考えられます。しかし財政事情も厳しいので、新たな自主財源を確保していくことがここ数年検討されてきて、今議会で条例制定議案が提出されたわけです。

これに対し、民主党系会派から反対討論が行われました。長年検討がされてきて、以前から知事は「平成20年4月から導入したい」と述べていたのに、特にこの間に行動を起こしたわけでもなく、いきなり反対です。

そもそも、過去の会派の代表質問でも、平成16年には「他県では導入が若干始まっているということで、もう少しペースを早めて新税の検討がされてもいいのではないか」と述べ、平成18年にも「導入については前向きな立場」と述べていました。しかし今日の採決では、退席をしました。

そして議会終了後に行われた、「森林・林業活性化議員連盟」の総会には、きちんと出席しているのです。この議員連盟では、林業団体が森林環境税の導入を要望していることを踏まえ、この森林環境税についても合意がなされていたと理解しています。全く言動に一貫性が見えず、参議院議員選挙が近いから対決姿勢をとるために反対しているのかと疑われても仕方ありません。
ただ、どのような目的であろうと、増税は増税ですので、私も手放しに歓迎というわけではありません。他のあらゆる局面で無駄遣いをなくしていくことは、当然の努力として引き続き更に強力に取り組まれなくてはいけません。導入が予定されている平成20年4月までの間に、広く県民に更なる周知と理解をいただけるような努力が必要です。
また、目的税ということになると、それでは足りない分野については新たな税目を創設すればいいのか、という安易な方向に行かないように、特に慎重に臨まなければいけません。

さらに、とちぎの森林は首都圏の上流部に位置しており、私たち栃木県民だけでなく、下流に位置する東京など、広く首都圏住民の生活環境の基盤となっています。ですから、森林が存在する県の住民だけの負担ではなく、その恩恵を受ける住民から広く受益者負担をしてもらう、という広域的な観点も必要であろうと思います。東京都もホテル税を課税したり、排ガス規制を強化するなど、他県住民にも負担を強いているわけですから、福田知事にも知事会などの場を通して、同じく森林を有する側の県と連携を取りながら、広域的な制度についても議論を進めていってほしいと思います。

世界を見ても、中国やインドなどの大国の近代化に伴い、環境汚染、環境破壊が大規模に起こっているそうです。日本にも黄砂が飛んできたり、廃棄物が日本海側に漂着したりしています。環境問題は一国の問題ではないということをあらゆる機会を通じて訴えていってほしいものです。